前回、料理写真の撮影ではどんなカメラを選べばよいのかについてご説明しました。
その中で、スマートフォンとミラーレスカメラのどちらを使うのかおすすめか?というお話をいたしました。
これは、広く一般の方がカメラを選ぶ際のポイントをご説明したのですが、今回はぐっと絞ってフードフォトグラファーの私がカメラを選ぶ際にチェックするポイントをご紹介します。

フォトグラファーによって違うカメラ選びの基準
今回は私のカメラ選びについてお話ししますが、同じフードフォトグラファーでもメインにしている撮影によってカメラ選びの基準は異なってきます。
私の場合、メインの撮影はウェブサイト、カタログ、チラシといった媒体が多く、ロケ先で数多くのカットを時間の制限の中で確実に撮影を終わらせるための機材を選んでいます。
これが、大型の媒体がメインで1カットをじっくり時間をかけて最高品質の写真を撮影する場合や、屋内外のイベントの料理写真などをメインに撮影する場合には全く異なる基準になると思います。
そのため、私の基準もあくまで1つの例として見ていただければと思います。
カメラ選びのチェックポイント!
1・イメージセンサーのサイズ
イメージセンサーというのはフィルムカメラでいうところのフィルムに相当する部分です。
このイメージセンサーのサイズが大きいほうが画質が良いため、大きなイメージセンサーのカメラを選びます。
現在の35mmミラーレスであれば、フルサイズが最も大きなセンサーになります。
ではなぜ大きなイメージセンサーを選ぶのかというと、次の2つの理由からです。
画質が良いから
1つめの理由は画質が良いということ
なぜ、イメージセンサーが大きいと画質が良くなるのかというと、同じ画角の写真を撮影した時、小さなイメージセンサーよりも大きなイメージセンサーの方が面積が大きい分、たくさんの光を取り込めるからです。
ちなみにイメージセンサーの大きさと「画素数」は違います。画素数が大きいと高精細な画像になりますが、小さなイメージセンサーで高画素の場合、1画素の大きさも小さくなるため光を取り込む面積が小さくなります。その結果、暗所撮影でのノイズが多かったり、階調が狭かったり、といったことが起きやすく、必ずしも高画質にならないことがあります。
スマートフォンのカメラのセンサーが高画素なのにフルサイズミラーレスよりも画質で勝てないのは、イメージセンサーが小さいからです。
もちろん、大きなセンサーでなおかつ高画素であれば、十分な光を取り込んだうえで、解像度も高くなるので、高画質な写真になります。中判サイズ(35mmよりも大きなサイズ)のカメラなどではフルサイズの何倍も大きなイメージセンサーで、1億画素などのものもあり、大変高画質な写真が撮れます。
また、元の画質が良い写真は後から画像編集する際にも画質劣化が起きにくいというメリットがあります。
レタッチを必ず行う私のような撮影スタイルでは、画質劣化が起きにくいというのは重要なポイントになります。
ボケ感がキレイだから
料理写真では全体にかっちりとピントが合った写真もあれば、雰囲気重視でキレイなボケ感のある写真もあります。
特にイメージカットではキレイなボケ感のある写真は見ていて気持ちが良いですよね。
そして、大きなイメージセンサーのカメラの方がこのボケ感を出しやすいのです。
ボケ感はその他にもレンズの絞りなどが関係するのですが、同じレンズの絞り値で、小さなセンサーと大きなセンサーでボケの度合いを比べると、大きなセンサーの方がボケ感が大きくなります。
以上がフルサイズのイメージセンサーを使う理由です。

2・RAWデータでの記録
ほぼ全て(おそらく全て)のミラーレスカメラは、RAWデータでの記録ができると思います。
しかし、コンパクトデジタルカメラなどではRAWデータでの記録ができないものもあります。
では、なぜRAWデータでの記録ができることが必要かというと、JPEGなどと比べて画像のデータ量が多いからです。
JPEGやTIFFは撮影時にカメラ内部で、ホワイトバランス、露出、コントラスト、彩度、圧縮などの調整が自動で行われています。
対して、RAWデータはなんの補正も施されていない未加工非圧縮の生データです。
JPEGやTIFFで撮った画像を後からさらに調整すると二重に補正することとなり、画像の劣化が起きやすくなります。
特にJPEGは再保存をすると画像が劣化するため、画像編集を繰り返すことには注意が必要です。
その点、RAWではなんの補正もされていないので、最も適した補正をフォトグラファーが行うことができ、画像の劣化を最小限に抑えることができます。
3・私に必要な解像度(画素数)
画素数と画質は比例しないことは先程も言いましたが、それでも画素数が大きい方が解像度は高くなるので、高精細な画像になります。
ただし、画素数が大きければ良いというわけでもありません。
画素数が大きくなるとファイルサイズが大きくなるので、後から現像・編集をするにもパソコンの負担が大きくなってしまいます。
ですので、必要な解像度を考えてカメラを選ぶことが大切です。
私の場合にはフルサイズイメージセンサーで3000万~4500万画素程度がちょうどよい画素数です。
もし、暗い環境での撮影が多いのであれば画素数は少なめ、写真を大きくする必要があって十分な明るさのある環境での撮影ならば画素数は高めを選びます。
4・オートフォーカスの性能
オートフォーカスの性能はメーカーやカメラによって違います。
料理写真の撮影ではマニュアルでのピント合わせも行いますが、俯瞰撮影などでファインダーを覗くのが難しい体勢ではオートフォーカスに頼った方が効率が良くなります。
そのため、オートフォーカスの性能が高い(と思われる)カメラを選んでいます。
スペック表だけではオートフォーカスの性能まではわからないので、すでに使っている人に聞いたり、借りるなどして確認します。
スペック上での確認点はフォーカスポイントが多く、フォーカスエリアも広いカメラです。
5・テザー(連結)撮影ができる
撮影中、パソコンとカメラをUSBコードなどで直接つないで撮影をすることをテザー(連結)撮影といいます。
料理の撮影ではテザー撮影ができると多くのメリットがあるのですが、カメラの仕様などを見てもテザー撮影ができるかどうかが記載されていないこともあるため、しっかりチェックします。
どのメーカーも中級機以上だとテザー撮影ができる機種が多いように思います。
ちなみに、私にとってのテザー撮影のメリットは以下の4つです。
1.すぐに画像を確認できる
テザー撮影では、撮影した画像をすぐにパソコンの大きな画面で確認できます。
画像を大きな画面ですぐに確認できるので、ピントだけではなく、画面の隅々まで細かな点をチェックできます。
2.ライブビューでフレーミングの確認ができる
ライブビューを使えば今のフレーミングを確認できるので、被写体や小道具、背景などの見え方の微調整も正確に行うことができます。
3.カメラの操作ができる
テザー撮影ではパソコンから露出の変更、ISO感度の変更、ホワイトバランスの変更、シャッターを切ることなどができます。
4.画像を直接パソコンのハードディスクに保存できる
撮影した画像を直接パソコンのハードディスクに保存できるので、その後の編集もスムーズに行うことができます。
その他の機能について
カメラにはその他にもオート、プログラム、各種モードなど便利な機能がたくさん備わっています。それらの機能は上手に使えば大変便利で良い写真を撮るのに役立ちます。
しかし、私に限って言えば、細かな設定ができることや、便利なモードがあることなどはあまり重視していません。
理由としては私の撮影ではそれらの機能はほとんど使っていないからです。
もちろん便利な機能ですから、あっても良いのですが、なくとも特に問題はありません。
それよりも上の4つの基本的な性能や機能の方が私の撮影では重要だと考えています。
私が現在使用中のカメラとレンズについて
現在、私が撮影で使っているカメラは2種類
ソニーのα7IVとニコンD850です。
ソニーα7IV
ソニーα7 IVは3300万画素という低画素過ぎず高画素過ぎずのちょうどいい解像度で、オートフォーカスのピント性能が高く、ライブビューなどが見やすく、小さく軽く、バッテリーの持ちが良いということで、カットをできるだけ素早くたくさん撮りたいときなどに大変使いやすいカメラです。
ただし、ソニーのレンズのラインアップにはシフトレンズがないため、ニコンと使い分けをしています。
歪み補正やピント補正などは撮影後のレタッチを行います。
使用しているレンズはFE 24-105mm F4です。

ニコンD850
もう一つのカメラはニコンD850です。一眼レフのデジタルカメラで、4575万画素あるため解像度に余裕がほしい時にも使えるカメラです。普段はこちらをメインにしています。
ミラーレスではないので最新のレンズは使えませんが、Fマウントであるためシフトレンズを使うことができます。
シフトレンズを使うことで、歪みの補正はもちろん、絞りだけでは出せないボケ感やパンフォーカスなどを使い分けることができます。
シフトレンズはマニュアルレンズのため、ピントと絞りは手動で行いますが、料理は動き回ることがないので、マニュアルでも問題ありません。
シフトレンズの45mm、85mmと24-70mm F2.8 ズームレンズを使っています。

まとめ
私の撮影で最適なカメラを選ぶためにチェックするポイントは、
1.イメージセンサーのサイズ
フルサイズであればOK!
2.RAWデータの記録
ミラーレスカメラは大抵RAWデータでの記録はできますが、必ず確認します!
3.必要十分な解像度
カメラの画素数は撮りたい写真や条件などによって変えることができるのが最も理想ですが、私が最も使いやすいのは3000万画素〜4000万画素くらいです。
4.オートフォーカスの性能
オートフォーカスの性能はカメラによってかなり違いますので、しっかりチェックします。
5.テザー撮影ができる
テザー撮影もカメラのスペックなどを見ても載っていないこともあるので、しっかりチェックする必要があります。
の5つです。
また、使用カメラはニコンD850とソニーα7Ⅳです。
D850はシフトレンズと組み合わせて使いたいという理由で使っています。
α7Ⅳはオートフォーカスの性能が良く、テザー撮影時にライブビューなども使いやすいという理由で使っています。
今回は私がカメラを選ぶ時の基準と実際に使用しているカメラについてお話しました。
参考にしていただければ幸いです。