料理の写真とカラーメーター

カメラ機材

前回は単体形の露出計について解説しましたが、今回はカラーメーターについて解説したいと思います。

料理撮影でカラーメーターは必ず使わなければいけないのか? 使うとすれば、どんな時に使うのか?

今回は露出計と並んで、撮影時に使われることの多いカラーメーターについて詳しく説明いたします。

露出計とカラーメーターの違い

露出計は撮影時の光の明るさを計測するために使いますが、カラーメーターは光の色を計測するために使います。

光にはさまざまな色が含まれており、そのバランスは光源により異なります。

この色のバランスを正確に把握し、撮影に適した色の光に調整するために使うのがカラーメーターです。

そして、写真撮影で使用するカラーメーターで主に測定するのは色温度と色偏差、演色性の3つです。

カラーメーターの種類

撮影用のカラーメーターとしては、以前はKONICA MINOLTAから販売されていましたが、今は販売が終わっています。

現在入手可能なカラーメーターはSEKONICのスペクトロメーターになります。

SEKONICのスペクトロメーターはいくつかの種類がありますが、基本的な性能に大きな差はないと思います。(スマホから操作できるなどの違いはあります。)

撮影用のカラーメーターとは別に産業用の色彩照度計というものがありますが、撮影用のカラーメーターは「カメラ」、色彩照度計は「人間の眼」を基準としており、用途が異なり、測定した値も異なる可能性があります。

カラーメーターで測定する色温度・色偏差・演色性

カラーメーターでは主に色温度、色偏差、演色性を測定します。

色温度

色温度は主に青から赤方向の色の変化で「K(ケルビン)」で表します。

カメラや画像編集で調整するホワイトバランスは色温度を調整しています。

では、なぜ色温度というのでしょうか?

簡単に言ってしまうと、黒体という理論的な仮想の物体(炭のようなもの)を熱したときの温度と色の関係を表したものです。

この変化を色度図上のグラフに表したものが黒体軌跡で、色温度の基準になります。

黒体の温度が低いとき(例えば2000K)のときには赤っぽく、温度が高くなると(5000K)白っぽく変化し、さらに高くなると(9000K)青白っぽくなっていきます。この色の変化をケルビンで表しています。

自然光では夕日の光は赤いので2500K、昼間の光は白いので5500K、曇の光は青白いので7000Kなどとなります。

一般的には5000Kの昼間の太陽光が色を正しく再現できると考えられますが、暖かみのある光にしたいときには4000K以下に、涼しげな青っぽい光にしたいときには7000以上にすることもあります。

色偏差

色には青から赤の方向の変化と緑からマゼンタ方向の変化があり、色温度との組み合わせで光の色が決まります。

色温度は青から赤の方向を表しますが、色偏差はもう一つの緑から赤紫の方向の変化を表します。

色温度の黒体軌跡からどれくらい緑〜マゼンタ方向にズレているかで、同じ色温度でも違った色に見えます。

色偏差も料理の種類や表現したい雰囲気などによって色の調整値は変わりますが、一般的には偏りの無い状態(±0)がきれいに見えると思います。

色のズレはカメラの色かぶり補正やフィルターなどを使って補正します。

演色性

日中の太陽光(自然光)を基準として、測定する光がどれだけ基準から離れているかを表したもので、平均演色評価指数(Ra)で表します。

基準と同じであればRa100で色再現性が最高となります。

一般的にはRa80以上あれば色の再現性の良い光と言われますが、高演色性のライトはRa90以上のものが多く、写真用のライトもRa90以上のものをおすすめします。

。料理の撮影では演色性が悪いライトを使うと、色がくすんで美味しそうに見えないことが多いため、できるだけ演色性の良いライトを使うようにします。

※高演色性のライトはメーカーなどの資料で確認できますが、撮影前には確認のためカラーメーターで測定しておくと良いと思います。

料理撮影でのカラーメーターの使い方

太陽光のみを光源として使った撮影

太陽光のみの場合にはカラーメーターがなくとも撮影できます。太陽光は演色性が100で最も色の良い光源なので、調整する必要があるのは色温度と色偏差のみだからです。

色温度と色偏差については撮影した画像をカメラで補正したり、画像の現像・編集ソフトなどを使って補正ができるので、カラーメーターは必ずしも必要というわけではありません。

太陽光以外の光源を1つだけ使った撮影

太陽光以外の光源を1つだけ使った撮影では、太陽光と同様に色温度と色偏差はカメラやパソコンで補正が可能です。しかし、光源の演色性については後からの補正が難しいため、撮影前にカラーメーターで確認しておく必要があります。

もし光源の演色性が著しく悪い場合には、光源の変更などを考慮する必要があります。

光源を複数使った撮影

複数の光源を使った撮影複数の光源を使った撮影では、それぞれの色温度、色偏差、演色性が異なると、撮影時のカメラ補正や撮影後のパソコンでの補正が難しくなります。(あちらのライトに合わせるとこちらのライトがずれる状態)

そのため、カラーメーターを使って光源ごとの色温度、色偏差、演色性を測定する必要があります。

カラーメーターで測定後にライトフィルターなどを使って色温度、色偏差をそろえることでカメラ補正や撮影後のパソコン補正が可能になります。

演色性については後からの補正が難しいため、必要であれば光源を変更します。

SEKONICスペクトロマスターC-700の使い方

SEKONICスペクトロマスターC-700を使って定常光を測定する方法を解説します。

1.本体左側の電源ボタンで電源を入れる

2.光量切り替えリング(光球外周のダイヤル)を「CAL」に合わせ、キャリブレーション(ダーク補正)します。

3.光量切り替えリング(光球外周のダイヤル)を真ん中に戻します。

4.「ツールボックス」から「デジタル」か「フィルム」を選択する

5.ターゲット色温度を合わせる

6.測定モードで「定常光モード」を選択する

7.メニューボタンを押して測定したい項目を選択します。

8.測定ボタンを押して測定します。

測定後の色補正の方法

カラーメーターで光を測定した後の色補正には次のような方法があります。

  1. カメラ内部の設定で補正する
  2. 撮影後の画像の現像や編集で補正する
  3. カメラレンズ用の補正フィルターを使って補正する
  4. 撮影用のライトにフィルターを掛けて補正する

といった方法があります。

1〜3はカメラに取り込まれる画像の色を補正するため、画像全体に補正がかかります。

対して4.はライトに補正をかけるため、ライトが複数ある場合にはそれぞれを補正します。それぞれのライトが照らしている範囲に補正がかかります。

ライトは同じメーカーの同じ製品であっても、それぞれ少しずつ(時には大きく)色の違いがあります。

ましてや、太陽光、ストロボ光、室内光などをミックスして撮影するときには必ず色が違います。

この色の違いはカメラ側やパソコンで一括で補正するのは難しいので、ライトを一つずつカラーメーターで測定し、フィルターをかけて色を補正します。

すべてのライトの色を補正したら、全体としての色を再度確認し、最後にカメラもしくはパソコンで微調整のための補正をします。

以上が料理撮影でカラーメーターを使った色補正の方法です。

まとめ

カラーメーターは光源が太陽光のみの場合には使わなくとも、特に問題はありません。

しかし、光源を複数使用する場合や人工光を光源とした撮影では色を測定することで、料理の色を正確に再現することができるようになります。

現在、新品で手に入るのはSEKONIC社製のカラーメーターですが、いくつかの種類があるので用途に合ったものを選ぶことをおすすめします。

光の色を測定したら、ライト用フィルター、レンズ用フィルター、カメラ内補正、パソコンでの色補正などで補正します。

料理撮影に適した光色に調整するためには、光源の色をカラーメーターで測定して補正することをおすすめします。

以上になります。

カラーメーターを使って、いままで以上に美味しそうな料理写真を撮っていただければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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